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アルジャーノンに花束を - 読了 [学問]

じゃあ、僕はまんじゅうを。

昨年7月、第1回書籍大量購入祭りにて入手した本でございます。
1年も経つのに、未だに感想文未完のものが3冊も…バリバリ書かねば('A`)

「アルジャーノンに花束を」は文庫版で485頁の長編小説。
僕が持っているのは単行本で、1頁の字数は文庫版と大して違わないはずなんですが
319頁しかありません…この差はなんなのでしょうか。後書きがめちゃくちゃ多いのか?

内容はというと、精神遅滞の青年が手術によって高い知能を手に入れるというお話で
差別的な表現が多々あるため、人によっては嫌悪感を覚える内容だと思います。

ただ、問題となるであろう表現をぼかして描いてしまうと、真意が伝わらない。
読者が差別について何らかの関心を持ち、一考するためにはその表現が必要であり
それは誰かを攻撃したり、卑下する意図で書かれたものではないのです。

ただ感動を得るために作中の人を殺したり、不治の病を患わせたりするのであれば
それは人の不幸をダシにして富を得ようとする、低俗な表現と言えるでしょうけれど
そこに正義に基づいた意志があるならば、否定されるべきではないと思います。
(死んだり病を患ったりするのは架空の人物ですが、同じ状況に置かれた人は
世の中に沢山いて、それらの人にとってはそれは架空の人物ではありえない)


と、長くなりましたが内容に触れてゆくとしましょう。
 
  
 
物語は主人公「チャーリイ」の報告書という形で綴られてゆきます。
彼は32歳なのですが、知能は6歳児のレベルであり、満足に(実年齢相応の)読み書きを
することができません。このため、物語の序盤は少々読み辛い文章となっています。

そんな彼がある日、知的障害を治療する手術を受けます。
この手術は最近開発されたものであり、これまでは動物実験が行われていたのですが
ある程度の成果が認められたため、人間に対して実施することとなりました。
チャーリイはその被験者第1号として選ばれたのです。

手術は成功し、チャーリイの知能は凄まじい勢いで上昇してゆきました。
そしてついに、一般人と同等どころか、天才と呼ばれる粋にまで達してしまいました。

…このようにしてチャーリイは高い知能を得たのですが、あまりにも急激に発達し過ぎて
気持ちが全然ついて行かなかったんですね。

それまでは6歳の子供でしたから、はっきりとした恋愛感情も性欲も無かったのですが
知能を得てしまったら、そりゃそういったものも芽生えてきてしまいますよね。
でも、彼は十分な人生経験を積んでいない(というか、成長過程を経験していない)ので
どうしたらいいか全くわかりませんし、自分がどうしたいのかさえわかりません。

そして、それまで自分を馬鹿にしてきた人間は、今となっては自分よりも知能の程度が
低い人間であるということを知ってしまい、見下すようにもなってしまいました。

人間というものは、知能の高低で価値が決まるわけではない…それは無論そうですが
そういった考えは人生経験の中で培われるものであって、突然高い知能を得た彼には
そんな考えは無いのというのは当たり前のことです。

知能が低かった頃のチャーリイは、とても優しい人間でした。
悪い事なんて何も知らないし、とても素直で、誰にでもニコニコ笑顔で接することができて
からかわれたりはしつつも、周囲の人に愛される存在でした。

知能が高くなったチャーリイは、とても傲慢な人間になりました。
人に対して寛容になることができず、人を見下し、誰とも打ち解けることができない存在。
当然、それまで付き合いのあった誰もが彼を避けるようになりました。

どちらが良いのでしょうかね。
馬鹿にされたとしても、それを「馬鹿にされた」とさえ感じないことが幸せなのか
それを理解できるようになって、人を憎むようになることが幸せなのか。

きっと、どちらも不幸なのでしょうし、どちらも幸せなのでしょう。
知れば知っただけの不幸があり、幸せがある。そして逆も同じなのだと思います。

ならば、他方を羨んだり、現在の自分を蔑んだりする必要は無いのです。
どちらにあったとしても、全てが満たされるということは恐らく無いのでしょうから。
もしも「ああだったら」が実現したとしたら、今の「こうだ」が無くなるのです。

これは他人との関係でも同じことが言えるでしょう。
人を羨むより、自分の持っている何かに気が付くことの方が遥かに大切で、有意義です。

誰かを羨むとしたら、自分の持っているカードを用いて、出来得る最高の手を繰り出した上で
負けた時ぐらいでしょう。そりゃもう、羨むほかにどうしようもありません。
とはいえ、全てを出し切ることが出来たらその時にはきっと羨む気も失せているでしょうけれど。

あぁ、なんかアルジャーノンとは全然関係の無い話になってきた('w`)
何だかよくわからない感想文になりましたが、とても面白い本なのでオススメでございます。

しかし、ひとつどうしても解けない謎が。

冒頭に「母へ、そして亡き父へ」とあるのですが…それが何のことかサッパリわかりません。
作中においてチャーリイの父親は亡くなっていません。著者のことなのか、訳者のことなのか。
ご存知の方がおられましたら、ご教示賜わりたく…


あ、「アルジャーノン」とは誰なのかを書き忘れました…
そこは、本屋さんでご確認頂くということでひとつ('w`)
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そら

ざっと読み直しました。
読み直したからと言って語るには深すぎるんだけど…。
アルジャーノンが辛い。あの子は本当にただの犠牲。
ここは本質から離れてしまうけど、今読み直して良かった。
現実には産まれながらの天才は居なくて、知識や知性は精神的成長と共に、得ていく物。
チャーリーを元は優しく素直。術後は傲慢。
これは周囲の方の方が傲慢な気がする。
結局最初から最後までチャーリーを受け入れなかった。
周囲が特別ひどい人とは思わないけど。
ただ、チャーリーも怒っちゃうよ。とは、思った。
改めてこれは本当に読むべき本。
一年前位かなぁ、読んだ事が無ければ、一度読む事って言われたらしい。
なんとなく思い出したw
良かったぁ…。
もう読み返す事が無いままになる所だったw
本の感想を語りあったり、討論は例え正反対であっても、喧嘩しても、楽しく向上出来る事。
本当に良かった!感想文記事をありがとうございました。
今読書中の感想も楽しみです!

by そら (2013-06-30 10:28) 

ゆうみ

読了おめでとう。
じゃぁ 私にはシュークリームを

by ゆうみ (2013-06-30 10:58) 

yu-ko

ホント、長編ですよね。
私も読み直してみようかな~と思います♪
私はアイスでお願いします(^^;

by yu-ko (2013-06-30 18:07) 

レンジ

うちも読んだ!っぽいは。
ぽわんに聞いてわかってん。ほんまウケるわ!
スゴい勘違いしてたやろ。でも、全く読んだ記憶が無いんが、あかんってみんなに突っこまれたけどな!
ぽわんと同じやなぁ…。
全然違うけど同じや。
天才って言われてる人はな、大変やねん。
ねずみも大事にしてるしな。いつも一人でなでてんのうちは知ってんねん。
努力やからな、せんせが一番知ってるんやろうけど、すごい努力やからな。
チャーリイって人は、実験やったから大変な事になってしまったんやな。高校生に教えてあげんねん。って思ったのにな、ぽわんに貸してもらってたわ!ぽわんの自転車早いからな。

by レンジ (2013-06-30 19:59) 

けーちゃん

こんばんは。
私までが連続でごめんなさい。
レンジが言い忘れたと、うるさいのでw
「二人の天才が同じ人を尊敬し天才と言ってる。」
と、今日盛り上がったんです。

アルジャーノンに花束をは、読みました。
私も深すぎて、コメントでは上手く伝える事は出来そうにありません。
努力で得た知識を生かして得た名声や名誉は素晴らしい事です。
人間としての生き方を問い掛け?てるのかな。
ただこの本で、天才は幸せでは無い。と、論じられる事も多いのかな。
そこは残念な事ですよね。

by けーちゃん (2013-06-30 20:13) 

ぷち

うちもこの本は単行本で読みました。
ただ、昔すぎて全く記憶がなく。。。
なので、Caelum様の謎、解けそうにありません。

by ぷち (2013-06-30 22:47) 

Caelum

こんばんは、うさじゃーのんCaelumです(・x・)

>>そらちゃん
アルジャーノンは実験台にされただけだからね…
退行してゆく中で逃げようとしたことからも、普通のネズミとして
自由にありたかったという気持ちが感じられるね。

せめて実験に携わった人が、アルジャーノンを道具としてでなく
仲間として扱ってあげられていたらなぁ…でもチャーリイだけは
アルジャーノンの仲間だった。それだけが唯一の救いか。

>周囲の方の方が傲慢
精神が子供で、知能だけが大人というのはとても難しい状態。
周囲から見れば精神も大人で当然なんだけれど、彼はそうではないから
知能を得てから知り合った人(過去や経緯を知らない人)は、やはり彼を
受け入れ難いのだと思う。これについては、仕方がないのかも。

僕も32歳の男性と出会ったら、やはり年相応の精神であることを期待し
それが当然であると考えるのではないかなと思う。
その場合、やはりチャーリイの言動は少し異様なものに見えるだろうから
上手く付き合うことは出来ないかもしれない。

パン屋の人々は手術のことは知らないけど、過去の彼を知っている。
今まで馬鹿にしていた相手が、突然自分より高い知能を得たものだから
やはりやり辛いというところだろうね。

それで態度が一変するのは、やはりパン屋の人々の根底に彼は知能が
低いのだという嘲り、哀れみが彼への気持ちの土台だったから、か。
自分より弱い存在に対しての優越感…それが無くなってしまった。
これらの人々は上の人達より、罪深いのかもしれない。

最後は全てを知っている人々、彼らは実に罪深い。
この人達は全てわかっていただろうに、それでもこの実験を行った。
自分の名誉のために、チャーリイを犠牲にしてしまった。

>楽しく向上出来る事
何事も色んな見方、考え方があるだろうから、それを臆せず出し合って
拒絶せずに取り込むことによって、新たな発見ができると思う。
自分の中に隠れていた意見を、他人の意見が引き出してくれることは
よくあるからね、それは他人を拒絶していては見つからないもの。

もちろん、譲れない場面や拒絶すべき意見も多々あるとは思う。
その辺りを見極めるのもまた、技術のひとつと言えるかな。
拒絶するにしても、その拒絶の仕方もまた技術…難しいものだね('w`)

>今読書中の感想
実は、読書感想文未稿のものが5冊あるのでまだまだ先かも…
とはいえ、読み終わるのも結構先になりそうだけれども。
そろそろ2冊目が終わりそうだから、3週間後に読了かな?

by Caelum (2013-07-03 22:14) 

Caelum

>>ゆうみさん
ありがとうございます、シュークリームはカスタードと
生クリームの入ったダブルシューでよろしゅうございますか。

by Caelum (2013-07-03 22:17) 

Caelum

>>yu-koさん
長編でも結構サクサク読める作品だなと思いました。
訳が良かったというのもありますネ、海外物は活かすも殺すも
訳者次第というところがありますからネ。
原文を読めれば一番良いのでしょうが、僕は英語が…('A`)

by Caelum (2013-07-03 22:22) 

Caelum

>>レンジちゃん
レンジちゃんが読んだのはひょっとして、麦畑なのでは('w`)
あの話を聞いてしまうと、僕も麦畑したくなってきてしまって
次回の本注文では麦畑デビューしようと思いますだ。

>天才は大変
天才といわれる人々は、かなり努力してるよね。
でも人からは「天才だ!」という一言で片付けられてしまう…

天才は「生まれつき備わっている、並み外れてすぐれた才能」と
言葉の意味ではそうなのだろうけど、努力しなけりゃその才能も
大きく育つことはない。

誰だって何らかの才能を持っていて、何かの天才なのだと思う。
ただ、それと出会える人はとても少ないし、出会ったとしても
努力しなきゃそれが十分に発揮されることもない。

天才は天から授かったものなのかもしれないけど、それを自分の
手に収めることができるかどうかは自分次第。
1%の霊感と99%の努力…というやつだね、どちらが無くてもいけない。

才能を授かること、才能と出会うこと、才能を育てること。
天才の成立条件ってめちゃくちゃ厳しいな('w`)

by Caelum (2013-07-03 23:00) 

Caelum

>>けーちゃん
ごきげんよう、けーちゃんさん。
5連続でも10連続でも大丈夫、遠慮は無用ですよ。

先日はレンジさんとお盛り上がりになりましたのね
それは楽しそうで何より。妹の幸福は私の幸福です。

…アレですね、わかる人はネタだとわかるから良いとして
わからない人には、ちょっと…いや、かなり微妙ですね('A`)

>アルジャーノンに花束を
お、けーちゃんも読んだかね(´ー`)
この話はかなり色んなものが詰まっているから、短い文章では
なかなか書き表すことが出来ないんだよねぇ。
僕の感想もかなーり絞って、感想の断片しか書いていない。

天才は幸せではない、表面的にはそう見える。
ある意味ではそれも正解ではあるけれど、この話の本質からすると
それで終わってはいけないな、という感はあるんだよねぇ。

ただ、突っ込んで考察するのはとてもエネルギーの要ることだから
表面を舐めるだけという読み方も、ありなのかもしれない。

僕は鮭の皮が好きなんだ。パリパリに焼くとおいしい。
でも身も好きだからね、少し手間がかかっても綺麗に食べるよ
猫が裸足で逃げ出すぐらいにね('w`)

by Caelum (2013-07-03 23:44) 

Caelum

>>ぷちさん
お、ぷちさんも単行本だったのですな!
文庫本のつもりで買ったので、デカい本が届いたときは
何事かと思いました…が、ハードカバーも良いものですネ。

記憶に無いというのは、ある意味ではお得ですよ!
もう一度楽しめるわけですからね、あの感動をもう一度(゜д゜)

>謎
どうやら解けた模様です。
読書の鉄人に聞いてみたところ、やはりアレは著者のことでは?と。
家族というテーマも含んでいますからね、それを考えると両親に
捧げるというのも納得が行きます。

by Caelum (2013-07-03 23:49) 

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