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変身 - 読了 [学問]

人というものは、今も昔も変わらないようで。

この本を読み終えたのは八月の初めごろでしたから、もう半年近くも前ですね
大阪へ向かう新幹線の待合所で読み終えたことを覚えています。

「変身」は文庫サイズで97ページという短めの話です。
この話の主人公は虫(芋虫?)なので、そういったものが苦手な方にはお勧めできません('`)

では、内容に触れてゆくとしましょう。
 
 
主人公のグレーゴルはぼちぼち良い給料を貰っている販売員。
日々忙しく働き、その給料で年老いた両親と妹を養っているという好青年だったのですが
ある日目覚めると、虫(脚のたくさんある芋虫?)に変身していました。

仕事には行けず、家族には気持ち悪がられる。
これまで一生懸命働いて家族を支えてきたのに、虫になったその日から厄介な存在として
扱われることとなり、それだけでなくドアには外から鍵を掛けられる始末。

人間サイズの芋虫ですからね、そりゃまぁ…
感情的には「いくら芋虫であっても、家族にその仕打ちは酷いだろう」と思うのですけれど
実際にその状況になったら、果たして家族として接することができるかどうか。

最終的には、父親にリンゴを投げつけられた際の傷が致命傷となって死んでしまいます。
そして家族は家を出て、別の場所で生活を始めます。虫になった長男がいないという安堵と共に。

Wikipediaによると、著者はこの話を笑い話として書いたそうです。
しかし、上の通りびっくりするほど暗い話です…笑いどころがサッパリわからない!

ひょっとすると、これを笑い話として受け取れない僕は何か問題を抱えているのかもしれません。
というのも、著者が何ら不幸を意図していないのならば、そこに不幸を見出すのは読者の想像で
内在する何らかの不安や問題がそこに反映されている可能性があるからです。

意図されていない不幸(と思われる話)を見た場合、その対象がどういった理由で不幸であるかは
あくまで読者が判断することで、読者の中で不幸であると判断できない不幸はそこには存在せず
読者の中の数ある不幸の中から「こうであるから主人公は不幸なのだ」と判断しますからね。

グレーゴルが職を失ったということが不幸なのか、家族から気持ち悪がられることが不幸なのか
外出できないことが不幸なのか、風呂に入ることができないことが不幸なのか。
グレーゴルは多くの不幸を抱えていますが、その中のどれだけの不幸を感じ取るかは読者次第。

「変身」するのはグレーゴルではなく、この話自体。
喜劇に変身するのか、悲劇に変身するのかは読者に委ねられているのかもしれません。
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ゆうみ

読者にゆだねられてると言うことは
その時の精神状態によって結末もかわるの?

by ゆうみ (2013-03-17 17:43) 

そら

笑い話と言うには確かに暗すぎで、結末までどんよりです。
ブラックジョークなのでしょうか。
痛烈な皮肉のような。
人間の排除や異分子を嫌ったり、色々な薄暗い部分を書いてますよね。
でも、もしも私が芋虫になったら。
家族はどちらかを選択するしかない。
私を排除するか、家族全員が排除されるか。
差し障りがあるので、ここで芋虫を他のものに置き換えは控えるけど。

人間って、諦観の感情があるから、生きていけるんだと思う。
難しい。
Caelumさまは哲学的。
何も問題は抱えてない。
カフカはあえて「芋虫」を連想させる表現をしてるでしょう?
芋虫や蛇への嫌悪感は遺伝子情報に組み込まれている。
物語全体に嫌悪感をしのばせてるんだから、笑い話とは思えないなぁ。
芋虫は私の心かもしれないし、誰かへの嫌悪感かも。
ぐるぐるしちゃう。

by そら (2013-03-17 22:41) 

レンジ

うち昨日頑張ってんけどなぁ…。寝てたわ。
ほんでこっちの感想をまずは話しなさい。って言われてん。
うちは笑ったけどな。
小説やからってむちゃくちゃやん。
最後もそのまま?みたいな。
ぽわんもせんせも賢いからなー。みんなも賢いから、なんかあるん?って思うんちゃうかな。
だって虫やで?むちゃくちゃやろ。
ほんでな、ぽわんの熱弁からやけどな、芋虫の人はな、不幸じゃないねん。
虫は死ぬ瞬間すごい幸せな物質が出るんやで。
すごい怖い話しやけどな。

by レンジ (2013-03-18 20:16) 

プースケ

こんばんは(^_^)
笑い話というより悲哀を感じます。私たちはたまたま
人間に生まれてきたけれど、別の生き物だったら
どうなっていたのでしょう。朝起きて人間でなくなって
いたら私の家族はどうするかなぁと考えました(^^)
せめて可愛いワンコがいいなぁ(^^ゞ

by プースケ (2013-03-18 21:30) 

Caelum

こんばんは、毒虫Caelumです(。д。)

>>ゆうみさん
なるほど、そうとも言えるかもしれません。
読む時期によっては、笑い話に見えるのかもしれません
その時の心境というのはどういうものでしょうなぁ…

by Caelum (2013-03-18 22:28) 

Caelum

>>そらちゃん
んむー、これは全く光が見えないお話だと感じた('`)
この話は人や社会に対する皮肉と、願望が込められているような
そんな気がしてしまうんだよなぁ…どうしても。
僕も具体的にここに書くのは控えるね、さすがに文章にするのは…

>嫌悪感
そうだねぇ、あえて誰もが嫌悪感を抱くようなものを登場させて
いるのだから、とても笑い話とは思えないもんなぁ。

カフカはこれを笑い話として書いたのかもしれないけれど
その時の心理風景は果たしてどうだったのだろうねぇ。
案外、カフカ自身が気付かない何かが込められているのかもしれない。

by Caelum (2013-03-18 22:45) 

Caelum

>>レンジちゃん
コメントを読んだ瞬間「凄い」と思った。
レンジちゃんは超越してるなぁ、物事をストレートに解釈し
自分の中に落とし込むというのは、とても難しいこと。
誰もが自分の中の「ひょっとしたら」に負けてしまうから。

レンジちゃんはそんなに難しいことではないと思うのかも
知れないけれど、僕にとっては極めて難しいことだ(´ー`)

>虫は死ぬ瞬間
そうなのか!だからカマキリのオスなんかはメスに食べられて
死んでしまうのだけれど、幸せならまぁいいのかな('`)
僕もそれなら…('w`)

by Caelum (2013-03-18 23:15) 

Caelum

>>プースケさん
そうですねぇ、家族に見捨てられる話というのは…
やはりいろいろと考えてしまって('`)
もしも自分が芋虫になっていたら、もしも家族が芋虫に
なっていたら…どちらを考えても、やはり気分が沈みます。

>可愛いワンコ
可愛いワンコなら可愛がって貰えそうですね(´ー`)
近所のワンコとも交友関係を築けるかもしれませんし
何とかやっていけそうな気もしなくもなく('w`)

by Caelum (2013-03-18 23:20) 

ぷち

うちも笑いどころがサッパリわかりませんでした。
何なら途中で絶句してしまいました。
親に!?リンゴに!?殺されるなんて。
でも、すぎに読めるのなら、読んでき喜劇にできるか試してみたいです。

by ぷち (2013-03-23 23:32) 

けーちゃん

おはようございます。
虫の話ですか…。
ちょっと苦手なんでなかなか手をつけられ無いままです。
彼女は虫系も平気でレンジは大笑いしながら読んでる光景に、女子チーム全員不思議な気持ちになったんですよw
私の愛読書を知ってたと聞いてびっくりしたんですけど、せんせも好きなんですか?
結構面白いと思うんですけど、みんな知らないんですよねー。

by けーちゃん (2013-03-24 11:10) 

Caelum

>>ぷちさん
なかなかハードな内容ですよね、死因がなんともむごたらしい…
父親が投げつけたリンゴが体にめり込んで(芋虫なので、体がやわらかい?)
それが原因で死亡…ということなのですが、想像するとちょっと('A`)

これを喜劇として読むには、かなり強いメンタルが要るなぁと思います。
僕には一生かかっても無理やもしれませぬ('`)

by Caelum (2013-03-24 11:25) 

Caelum

>>けーちゃん
おはよう、けーちゃん(´ω`)

読みようによっては、結構グロテスクで残酷な話だからねぇ…
けーちゃんは苦手な部類の本だと思うから、微妙やもしれない。
オススメ度的にはそう高くはないかな…10点満点で4点ぐらい?

>愛読書
けーちゃんが読んでいると聞いて、結構驚いたよ('w`)
しかしよくよく考えると、登場人物がけーちゃんの周りの人々に
当てはまるような気がするんだよなぁ。

初代で言うと、けーちゃんが紅、レンジちゃんが白、ぽわんちゃんが黄。
僕のイメージ的にはそんな感じかな(´ω`)

by Caelum (2013-03-24 11:39) 

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